高額の自動車は減価償却費が高くなるため、経営者や個人事業主にとってその節税効果としては魅力的です。しかし、新車や中古車によって減価償却額の大元となる耐用年数によって大きく異なります。
また、定額法と定率法という2つの計算方法があり、どちらも選択できるために計算方法は一筋縄ではいきません。
減価償却費は大まかな計算方法を知っておくと、自動車を購入する際の意思決定の一要素になります。特に中古車の場合は耐用年数がどれくらいなのか、何年経過している車が得なのかを覚えると便利です。
この記事では、耐用年数と減価償却費の計算方法から、3年10か月落ちの中古車がお得な理由、定額法・定率法の違いを解説します。
中古自動車の減価償却の仕組み
購入した車の減価償却費は、「定額法」「定率法」「リース期間定額法」という3つの方法で算出することができます。「リース期間定額法」はカーリースを行った際の減価償却費を計算するものなので、ここでは説明を省きます。
なお、新車と中古車の減価償却費の計算方法で違いが出るのは「耐用年数」です。新車は6年(普通自動車)か4年(軽自動車)と定められていますが、中古車は法定耐用年数を定められた方法で計算します。
定額法
定額法は自動車の法定耐用年数の範囲内で、毎期均等に減価償却費を計上する方法です。ただし、所有してから1年が経過していない場合は、月数で案分します。減価償却費は事業年度の月数で除してください。
定額法:減価償却費=取得価額×定額法の償却率 |
【定額法の償却率】
耐用年数 | 定額法の償却率 |
2年 | 0.5 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.25 |
5年 | 0.2 |
6年 | 0.167 |
定額法は算出方法がシンプルですが、定率法と比べて初期の節税効果が低いという特徴があります。
定率法
定率法は取得した資産の未償却残高に一定の償却率を乗じて減価償却費を計算する方法です。
定率法:減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
【定率法の償却率】
耐用年数 | 定率法の償却率 | 改定償却率 | 補償率 |
2年 | 1 | – | – |
3年 | 0.667 | 1 | 0.11089 |
4年 | 0.500 | 1 | 0.12499 |
5年 | 0.400 | 0.5 | 0.10800 |
6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
定率法の場合、2年目以降は「(車の取得価額)-(累計減価償却額)×(定率法の償却率)」となります。定額法と同じく、1年が経過しない場合は月数で案分します。
定率法は初期ほど償却額が大きく、年数とともに減少するという特徴があります。自動車を取得した初年度など、出費が大きかった初期段階で節税効果を高めることができます。
定率法には補償率と改定償却率という2つの項目があります。定率法で計算した減価償却費が、取得価額に補償率を掛けて算出する償却補償額を下回った場合、それ以降は改定償却率を使って計算します。
中古車の耐用年数の計算方法
新車の耐用年数は普通自動車が6年、軽自動車が4年でした。中古車の場合は耐用年数が一律ではなく、決められた計算方法があります。
なお、耐用年数とは国税庁が定めている固定資産の法定耐用年数のことで、取得した資産をどれくらいの期間で償却するのかを決めるものです。
経過年数が新車の耐用年数以内の場合
中古車の経過年数が6年または4年以内だった場合の計算方法です。
耐用年数=新車の耐用年数-経過年数+(経過年数×0.2) |
※1年未満の端数が生じた場合は切り捨て
例えば、2年経過した普通自動車の場合4.4となり、端数を切り捨てて4年となります。普通車と軽自動車で基準となる耐用年数が異なるので注意してください。
また、2年に満たない場合は2年とする決まりです。
経過年数が新車の耐用年数を超えている場合
中古車が新車の耐用年数を超えている場合の計算方法です。
耐用年数=法定耐用年数×0.2 |
※1年未満の端数が生じた場合は切り捨て
8年が経過している普通自動車の場合、6年×0.2で1.2となります。端数を切り捨てて1年ですが、2年に満たないものは2年にする決まりです。従って、2年となります。
具体例で耐用年数を計算してみよう!
ケース別に耐用年数を計算します。普通自動車と軽自動車でそれぞれ耐用年数を出しましょう。
改めて計算式を紹介します。
【経過年数が新車の耐用年数以内の場合】
耐用年数=新車の耐用年数-経過年数+(経過年数×0.2) |
【経過年数が新車の耐用年数を超えている場合】
耐用年数=新車の法定耐用年数×0.2 |
※1年未満の端数が生じた場合は切り捨て
3年落ちの普通自動車の場合
普通自動車の場合の新車耐用年数は6年。以下のようになります。
耐用年数=新車の耐用年数:6-経過年数:3+(経過年数:3×0.2)=3.6 |
耐用年数は3年です。
10年落ちの普通自動車の場合
法定耐用年数を超えている場合、経過年数は関係ありません。
耐用年数=新車の法定耐用年数:6×0.2=1.2 |
端数を切り捨てて1年ですが、2年に達していないので耐用年数は2年となります。
2年落ちの軽自動車の場合
軽自動車の新車の耐用年数は4年です。
耐用年数=新車の耐用年数:4-経過年数:2+(経過年数:2×0.2)=2.4 |
端数を切り捨てて2年となります。
6年落ちの軽自動車の場合
新車の法定耐用年数を超えている6年の場合は以下のようになります。
耐用年数=新車の法定耐用年数:4×0.2=0.8 |
2年に達しないものは2年とする決まりです。耐用年数は2年となります。
減価償却額の計算方法
ここで、改めて償却率の一覧表と耐用年数を確認し、シミュレーションを行いましょう。3年落ちの普通自動車を300万円で購入した場合です。
まずは耐用年数を出します。
耐用年数=新車の耐用年数:6年-経過年数3年+(経過年数3年×0.2)=3.6 |
耐用年数は3年です。
耐用年数3年の中古車を300万円で取得した場合、定額法と定率法は以下のようになります。
定額法
【定額法の計算式】
定額法:減価償却費=取得価額×定額法の償却率 |
【定額法の償却率】
耐用年数 | 定額法の償却率 |
2年 | 0.5 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.25 |
5年 | 0.2 |
6年 | 0.167 |
【減価償却費のシミュレーション】
計算式 | 減価償却費 | |
1年目 | 300万円×0.334 | 100.2万円 |
2年目 | 300万円×0.334 | 100.2万円 |
3年目 | 300万円×0.334 | 100.2万円 |
定率法
【定率法の計算式】
定率法:減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
【定率法の償却率】
耐用年数 | 定率法の償却率 | 改定償却率 | 補償率 |
2年 | 1 | – | – |
3年 | 0.667 | 1 | 0.11089 |
4年 | 0.500 | 1 | 0.12499 |
5年 | 0.400 | 0.5 | 0.10800 |
6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
【減価償却費のシミュレーション】
計算式 | 減価償却費 | |
1年目 | 300万円×0.667 | 200.1万円 |
2年目 | (300万円-200.1万円)×0.667 | 66.6万円 |
3年目 | (300万円-200.1万円-66.6万円)×1 | 33.3万円 |
3年目の償却率が1になっていることに注目してください。3年目に減価償却額が償却補償額を下回ったため、改定償却率で計算しています。
中古自動車の減価償却で注意すべき点は?
節税効果の高い減価償却ですが、何でもかんでも経費に入れて償却できるわけではありません。抑えておきたいポイントがあります。
プライベートで使用する分は経費にできない
購入した中古車を事業用だけでなく、プライベートでも使う場合は、事業用で使う分だけが減価償却費となります。検証可能な基準で考える必要があり、走行距離や利用時間などでプライベートでどれくらい使うのかを計算してください。
仮に8割を事業用として使用する場合、2割は経費として認められません。会計上は「事業主貸勘定」で処理を行います。
過度な高級車は危険?
減価償却には事業用として購入しなければなりません。実際に事業に使われているのかどうかがポイントです。万が一、税務調査が入った場合、自動車と業務との関連を厳しく見られます。趣味性の高いスーパーカーやスポーツカーの場合、事業用としての正当性があるのかを説明できなければなりません。
日常の足として使いやすいセダンの方が、事業用として認められやすいと言われています。
購入するタイミングも重要
減価償却費で節税効果を高めるためには、事業年度の最初の月に購入してください。通年で寄与しない場合は、月数で案分されてしまうためです。
個人事業主は1月を初年度としている人が多いはずです。自動車の取得は1月に行ってください。その方が節税効果が高まります。
3年10か月落ちの中古自動車が最もお得な理由は?
節税効果が最も高いのは3年10か月だと言われています(ただし、定率法の場合のみ)。なぜなら、3年10か月落ちの中古車は1年で償却できるためです。
3年10か月落ちの車の耐用年数は、2年11か月。あとひと月超えると3年になってしまいます。3年10か月が経過した自動車は、ギリギリ2年のラインの内側にいるのです。
国税庁は平成24年4月1日以降に取得した減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率を2倍した償却率の適用が可能としています(200%定率法)。そのため、耐用年数2年の中古自動車の償却率は1となり、初年度で一括経費にできるのです。
減価償却の仕組みを知って賢く自動車ライフを
減価償却費の計算方法がわかると、新車や中古自動車を経費で購入する際に役立ちます。特に中古自動車は耐用年数がポイントになるため、何年経過したものが相応しいのかを判断する材料になります。
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