アメリカは原則として右ハンドルの輸入を認めていません。しかし、製造から25年以上経過した車であれば、輸入を認めています。これは古い車であれば、趣味性の高い車と判断され、国内の自動車メーカーの脅威とはならないだろうとの考え方からです。
この制度を「25年ルール」と呼びます。アメリカでは90年代の日本のスポーツカーに人気が集まっており、25年経過した右ハンドルの車を積極的に輸入しようとしています。需要が高まっているため、スカイラインやGT-Rなど一部の車種が高騰しているのです。
25年ルールの詳細やアメリカで人気のある車種を紹介します。
25年ルールとは?
アメリカで定められている25年ルールとは、製造から25年以上経過した車は、クラシックカーとして登録できるという制度です。このルールは並行輸入車の全面禁止の緩和措置として、1988年に導入されました。
このルールが適用されると、厳しい安全基準や要求される一部の仕様が免除されるという利点があります。
25年ルールで日本車が得られる恩恵として、右ハンドル車がそのままの形でアメリカに輸出できるというものがあります。また、関税や排ガス規制も対象外となるため、古い基準の車でも問題ありません。
1980年代から1990年代の日本のスポーツカーが、中古車市場で高値で取引されるようになりました。これは25年ルールが少なからず影響しています。
中古車業界は需要と供給のバランスが価格として反映されやすい市場の一つ。新車価格が高い車でも、人気がなければ中古価格は安くなります。例えば、スカイラインV35型は新車価格が250万円で、日産が開発した高性能クーペですが、中古車は30万円以下で取引されることも少なくありません。
これは不人気で需要がないためです。
V35系よりも古いR32型は2~300万円で取引されています。国内でも依然として人気が高く、25年ルールでアメリカへの輸出も旺盛なモデルです。一定の需要があるため、中古価格が下がりません。
25年ルールは日本車の中古車価格を見る上で、欠かせない要素の一つです。
アメリカで日本車が人気の理由
なぜ、アメリカでは古い日本のスポーツカーに注目が集まっているのでしょうか。
映画「ワイルド・スピード」
火付け役になったのが、2001年に公開された映画「ワイルド・スピード」です。違法なストリートレースに焦点を当てたもので、トヨタ・スープラ、三菱・エクリプス、マツダRX-7、日産シルビアなど、数々の日本のスポーツカーが登場します。
この映画はメインが9作、スピンオフが1作製作されるヒットシリーズとなり、ユニバーサルの主力タイトルの一つとなりました。
シリーズ3作目の「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」は日本でロケが行われています。フェアレディZ、RX-8などの名車が登場しました。
ゲーム「グランツーリスモシリーズ」
「ワイルド・スピード」は批評家からアーケードゲームのような楽しさがある、との評価を得ています。この映画がヒットする要因として、アメリカでレースゲームが絶大な支持を得ていたことがあります。
人気ゲーム「グランツーリスモ」を開発しているのが、ソニーの子会社ポリフォニー・デジタル。実際の車を徹底的に観察してゲームの操作性を磨き上げている会社で、アメリカの若者から圧倒的な支持を得ています。
世界中の車がラインナップされていますが、当然日本の車が充実しています。子供のころからゲームで日本車に親しんだ世代が、違和感なく日本のスポーツカーを選んでいるのです。
良好なコンディション
日本の中古市場で取引されているものは、状態が良いものが数多くあります。これはモノを大切にするという日本文化の賜物と言えるでしょう。
ポルシェやフェラーリのような車の場合、世界中の自動車ファンがサーキットで使用し、傷んでいるものが少なくありません。
日本のスポーツカーもサーキットを走らせているケースもありますが、割合としては高くありません。外装や足回り、エンジンが良好な状態で保たれていることが多く、アメリカで高く販売することができます。
円安(ドル高)
日本は空前の円安に見舞われています。これは日米の金利差によるもので、経済が弱含んでいる日本は金融緩和を継続せざるを得ません。金利差が拡大している限り、円安が解消されることはないでしょう。
ドルで買い物をするアメリカは、圧倒的に有利になりました。例えば、1ドル110円の時代に330万円の日本車を購入するのに必要な金額は3万ドル。1ドル140円であれば、2万4千ドルで購入できます。
仮に日本車の中古車価格が上がったとしても、為替の影響で相殺できることもあるのです。
アメリカで人気の(出そうな)日本車
アメリカで人気を獲得している車や、25年ルールで取引が活発になりそうな車を紹介します。
トヨタ「スープラ」
映画「ワイルド・スピード」で一躍その名をとどろかせたのが、スープラでした。映画で使用された実際のスープラは、ラスベガスのオークションで6,040万円で落札されています。
スープラはトヨタのフラッグシップスポーツカーとして根強い人気のあるモデルです。A80型は1993年に登場し、1,000PSオーバーという高度なチューニングでファンを虜にしました。スポーツカーの名に相応しいデザインと相まって、伝説的な車の一つに数えられます。
日産「スカイラインGT-R(R32型)」
2018年に輸入が解禁され、アメリカで大人気を博したのがR32型のスカイラインGT-Rでした。
チューニングをして楽しむ自動車ファンが多く、カスタマイズした車をSNSにアップするドライバーが後を絶ちません。
かつてこの車は市販車のレースにおいて全戦全勝するという金字塔を打ち立て、日本中を熱狂させました。日本にも根強いファンがいるモデルです。
日産「スカイラインGT-R(R34型)」
2023年に25年ルールが適用されるモデルです。人気化は必至と見られており、日本の中古車市場においても高騰が予想されています。
R34型スカイラインは、R33型GT-Rに匹敵する剛性を持ち、ホイールベースを55mm短縮。全長も60mm短くして走行性能を高めています。2.5リッターの直列6気筒ターボエンジンはただでさえ高出力ですが、カスタム次第で更なる走りを追求することができます。
三菱「ランサーエボリューション」
2021年に輸入が解禁され、価格が高騰したのがランサーエボリューションIVでした。アメリカではラリーカーは人気がありませんでしたが、日本車のパーツを使ってカスタマイズする「JDM(Japanese domestic market)」の盛り上がりに後押しされて、需要が急増しました。
この車は香港の「実写版イニシャルD」に登場したことで爆発的な人気となり、アメリカ以外でも高値で取引されています。
スバル「インプレッサ」
インプレッサ22Bも2023年に解禁になる車です。ランサーエボリューションと同じくラリーカーを再現したモデルで、限定400台しか製造されませんでした。
ボディは特別なブルーで塗装され、専用のボディパーツが使われています。最高出力は280PSと言われていますが、ランサーエボリューションと同様に300PS以上を発揮していたと言われています。
希少性と実力の高さから、高値で取引されるのは間違いないでしょう。
ホンダ「NSX」
NSXは2020年に輸入が解禁された車です。一時期は価格が高騰して2,000万円で取引されていたこともありました。
現在は取引額がやや落ち着いたものの、アメリカでは依然として人気の高いモデルです。NSXはスーパーカーとして登場しましたが、運転しやすく耐久性もある車として世界中で受け入れられました。スーパーカーは壊れやすいという常識を覆したのです。
日本車の人気も重なってNSXは再評価され、人気が衰える様子はありません。
名車をアメリカに流出させた背景
日本の往年の名車がアメリカに流れている理由の一つに、2015年5月から始まった日本の重課税制度があります。年式の古い車の税金を重くするというものです。
重課税制度は概ね15%程度税負担が重くなります。
よほどの自動車ファンでない限り、日本市場で古い車は人気がなくなりつつあります。
21年ルールとは?
アメリカには21年ルールというものもあります。これは工場出荷時の状態と同じ仕様のエンジンを積んでいれば、製造後21年の経過で輸入が可能になるというものです。
ただし、工場出荷状態のエンジンが搭載されており、製造後21年経過しているという2つの要件を満たす必要があります。
25年ルールを適用しない車もある
25年ルールを経て輸入された三菱デリカや軽自動車の一部がナンバー返納を命じられたというニュースがありました。
政府が輸入を許可しても、登録は州単位で行っているためで、一部の州では意図的に日本車を排除する目的で登録を却下しているというものです。
90年代の日本車は高く売却できる可能性がある
日本の往年のスポーツカーはアメリカで人気が高く、市場価格が高騰しています。ガレージで眠っている車があれば、高値で売却できるかもしれません。
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